2021年8月3日【2面】
国内外で猛威を振るう新型コロナウイルスのデルタ株をめぐり、米疾病対策センター(CDC)が作成した内部文書が日本政府にも衝撃を広げています。
「デルタ株は水ぼうそう(水痘)と同じぐらいの感染力があるというCDCの内部文書が出てきている。だとすれば大体1人から8、9人に広がっていく大変な感染力だ。フェーズ(局面)が変わってきている」。田村憲久厚生労働相は1日のNHK番組でこう語り、強い危機感を示しました。
同内部文書は、ワクチン接種済みの人でもいったん感染すれば未接種者とほぼ同量のウイルスを生み出し、他の人に感染させるリスクは未接種の人と変わらない可能性があるとも指摘しています。
これまでもデルタ株が従来株より強い感染力を持つことやワクチンの感染予防効果を低下させると指摘されていましたが、接種済みの人からも感染が広がる恐れが強くなった格好です。
菅義偉首相は7月31日の会見で「8月下旬には2回の接種を終えた方の割合が全ての国民の4割を超えるよう取り組み、新たな日常を取り戻す」などと述べ、ワクチン頼みの姿勢を鮮明にしていました。
重症化予防などのためにもワクチン接種は重要ですが、デルタ株の感染力が明らかになるにつれてワクチンさえ打てばいいという考え方は崩れ去っています。
また、厚労省によると、接種で十分な免疫ができるのは、ファイザー社製の場合、1回目の接種の3週間後に2回目の接種を受けてから7日程度たって以降です。モデルナ社製の場合、1回目の4週間後に2回目の接種を受けてから14日目以降です。
予約が困難になっている現役世代が、これから接種できたとしても、現在進行中の第5波には間に合いません。
ワクチンだけでなく、五輪中止で国民と危機感を共有し、十分な補償で自粛の実効性を高めたり、いつでも誰でも無料でPCR検査ができる体制をつくったりするなど総合的な対策を強力に進めることが求められています。